ハノイ・ホーチミンの賃貸物件検索サイト

+84 024 3795 4290
日本語直通

Home » 生活情報 » ベトナムの台風シーズンと備え
ハノイの大雨の被害の様子

ベトナムの台風シーズンと備え

目次

昨年(2024年)の夏、台風ヤギ(国際名:タリム)がベトナム北部に上陸したのは記憶に新しいことと思います。私が暮らすハノイ市西部の街もその影響をモロに受け、猛烈な風雨に見舞われました。ハノイでは昨年、9月18日頃から激しい雨が降り続き、市内各地で道路の浸水(冠水)が発生。主要道路がみるみる水没し、交通は大混乱です。実際、Pham Hung通りとDuy Tan通りの交差点付近では乗用車のタイヤが完全に水没するほどの水深になり、多数の車両がエンストして交通が寸断されました。私の周りでもバイクは水に浸かって動かなくなる人が続出し、運転手たちは慌ててバイクを歩道に押し上げていました。

ハノイは毎年、7月から9月が台風シーズンとなりますが、昨今の温暖化の影響で海水温が例年よりも高く、10月も油断してはいけません。台風8号「ラガサ」は台湾や香港で猛威をふるい、死者も多く出ていました。
昨年大きな被害をもたらした「ヤギ」を参考に、どういった対処が必要なのか?解説したいと思います。

2024年・台風ヤギ襲来!ハノイ西部で起きたこと

ハノイ中心部のノイバイ国際空港も安全確保のために一時閉鎖され、北部のバンドン空港(クアンニン省)やカットビ空港(ハイフォン市)と合わせて3空港が閉鎖される事態となりました。幸いハノイ市内では直接的な人的被害(死亡者など)報じられず、避難勧告が解除されました。それでも街中のインフラや生活は大きく乱れました。

停電や断水の不安も頭をよぎりましたが、私の住むマンションでは幸い電気は確保。しかしエレベーターには影響が及びました。管理側の判断でしょう、高層マンションのエレベーターは1基を残してすべて停止していました(おそらく不用意に住民が外出しないようにするためでしょう)。私は暴風雨の夜、様子を見ようと一度1階ロビーまで降りてみましたが、エレベーターが止まっては身動き取れません。結局また自室に引き返し、窓の外の暴風雨に耳を澄ませるほかありませんでした。

部屋の中でも油断なりません。強風で窓ガラスに叩きつける雨のせいで、窓枠のコーキング(隙間充填剤)のわずかな隙間から雨水がじわじわ浸入してきたのです。夜中にタオルを総動員して窓辺に詰め、水がこれ以上入らないよう必死に凌ぎました。高層階でもこんな形で雨漏り被害が起こり得るのだと痛感しました。

さらに驚いたのは水道トラブルです。私のマンション自体は断水にならなかったものの、郊外では浄水場が浸水して一時稼働停止し、周辺地域で断水が発生したとの報道もありました。ハノイ市内でも大雨によって配水管に泥が混入したのか、一部地域で水が濁ったり出が悪くなったりしたという話を後で耳にしました。「水が出なくなるかも…」という不安は現実的なものだったのです。

豪雨がもたらした生活への影響:交通マヒ・断水の現実

台風ヤギによる記録的な豪雨は、首都ハノイの都市機能にも大きな影響を及ぼしました。上述のように道路は各所で冠水し、市内の幹線道路(トーフー通り、グエンチャイ通り、チエンクアン通り等)も広範囲で水浸しとなりました。ちょうど通勤時間帯とも重なったため大渋滞が発生し、クラクションがあちこちで鳴り響いていました。低床バスや乗用車は立ち往生し、バス停では運行再開を待つ乗客があふれて混乱状態です。一方、高架を走る都市鉄道は通常通り動いていたため、安全な移動手段を求めて駅に長蛇の列ができていたのが印象的でした。

また、各地での断水や停電の情報も飛び込んできました。特に激しい雨に見舞われた地域では、水道ポンプ場や変電設備が浸水して停止し、一時的に水や電気が止まった所もあったようです。幸い私の住むエリアでは停電は発生しませんでしたが、「いつ停電してもおかしくない」という緊張感がありました。エレベーター停止の他にも、照明がチカチカ瞬いたり、通信が不安定になったりと、“来るか?”と身構える瞬間が何度もありました。

こうした混乱の中でつくづく感じたのは、ライフラインが止まる怖さです。電気が止まればエアコンや冷蔵庫はアウト、水が止まれば飲み水どころかトイレも流せない。実際タインホア省では豪雨で浄水場が止まり、一帯が断水するケースがあったとのことで、本当に他人事ではありません。マンション高層階は浸水こそしないものの、停電するとポンプでくみ上げている給水が止まり断水になるリスクもあります。都市部に住んでいても、大雨・洪水時には「水」と「電気」を失う可能性を常に念頭に置く必要があると痛感しました。

腰の高さまで浸水被害が及んだエリアもありました
倒木の処理に国防軍の隊員も動員されました

台風に備える:飲料水・食料の確保と生活の工夫

台風ヤギ襲来を前に、私たち住民も事前準備に奔走しました。上陸が予測された前日の金曜日、仕事帰りにスーパーに立ち寄ると、生鮮食品コーナーは見事にすっからかん。夕方には肉・野菜・インスタント食品など必需品が軒並み売り切れ状態で、思わず唖然としました。ふだんは「なんとかなるさ」と楽観的なベトナムの人々も、この時ばかりは危機感を持って2~3日分の食料をまとめ買いしていたようです。私もかろうじて残っていたキノコや肉、冷凍食品をカゴに入れ、翌朝の小雨の時間帯に市場で青菜などを追加購入して備えました。飲料水も同様で、大型スーパーでは箱入りのペットボトル水が飛ぶように売れていました。普段浄水器を使っているご家庭も、この時ばかりは「念のため市販水を確保しよう」という判断だったのでしょう。

ここで一つ学んだ教訓があります。浄水器頼みのリスクです。私の自宅にも日本製の浄水ポットがありますが、断水してしまえば元も子もありませんし、そもそも水道水が泥で濁るような非常時に果たして浄水器で安全が保てるのか…不安が残ります。実際、大雨で水道水が茶色く濁る現象は以前にも経験しました。停電で浄水設備が止まったり、水源が汚染されたりする可能性も考えると、非常用の飲料水は必ずストックしておくべきだと痛感しました。「浄水器があるから大丈夫」と過信せず、ペットボトル飲料水を数日分買い置きしておくことを強くお勧めします。

また、断水に備えた生活用水の確保も重要です。私は台風前夜、バスタブにたっぷり水を張っておきました。こうしておけば万一断水してもトイレを流す水や、手洗い・簡易的な洗浄水として使えます。実際今回は断水にならずに済みましたが、浴槽に蓄えた水はその後数日にわたり心の支えとなりました。使わずに済んだとしても、備えておくことで安心感が違います。

その他に準備して役立ったものといえば、モバイルバッテリー携帯用のソーラーランタンです。停電への備えとしてスマホの予備バッテリーは満充電にし、懐中電灯やランタンも手元に置いておきました。幸い停電はありませんでしたが、夜間に一度だけビル全体が一瞬真っ暗になった際は肝が冷えました。非常灯やモバイルバッテリーの明かりがあれば、真夜中に突然照明が消えても落ち着いて対応できます。それからベランダの排水口掃除も忘れてはいけません。私はベランダに溜まった枯れ葉やゴミを事前に取り除いておきました。排水口が詰まったままだと、強雨でベランダに雨水がプール状態になり、最悪室内に浸水してしまいます。実際、日本でも台風前にはベランダ排水溝の掃除を呼びかける声があります。ベトナムのマンションでも同様に、自宅の小さな排水経路を点検しておくだけで雨漏り・浸水のリスクをぐっと減らせるのです。

洪水リスクを考えた住まい選び:高層階のメリット・デメリット

今回の経験から、ハノイで暮らす上で居住エリア選び住居の階数についても考えさせられました。私が住むのはハノイ西部の比較的新しい開発地域ですが、正直「西部なら浸水の心配は少ないだろう」と高をくくっていました。しかし現実には、西部エリアでも低地は普通に浸水します。市当局の発表によれば、ハノイ市内では低地や堤防の外側に位置する地域が冠水しやすく、例えばバックトゥーリエム区(西部)やロンビエン区(東部)、ザーラム郡(郊外)など各所で冠水が確認されています。西部エリアでも川沿いや低湿地を埋め立てた土地は要注意です。逆に地盤が高めのエリアや排水設備の整った新興住宅地は被害が比較的軽微で済む傾向があります。たとえばホアンキエム区など古くからの市街地は下水改良が進んでいて冠水が減ったとか、タイホー区でも西湖周辺はまだしも川沿いは危ない…など、長年の経験に基づく知恵があります。これから住居を探す方は、不動産屋さんに「ここ最近の大雨で浸水したことがありますか?」と聞いてみるのもありでしょう。

高層階に住むメリット・デメリットも今回身をもって知りました。高層階(私の場合20階以上)は、まず地表の洪水からは無縁です。道路が川のようになっても自室まで水が来ることはありません。また風通しが良く、水害時に発生しがちな蚊の大群などにも悩まされにくいという利点もあります。その一方で、デメリットもあります。停電時の問題がその筆頭です。エレベーターが止まれば上り下りは階段頼みになりますし、給水ポンプが止まれば上階ほど断水しやすくなります。今回の台風では先述の通り非常用電源でエレベーター1基は動いていましたが、それでも完全復旧までずっと階段という可能性も十分あり得ました。高層階は眺めが良く洪水の直接被害は無いものの、災害時には孤立しやすい側面があります。また意外な盲点として、強風による被害です。私の部屋では風圧で窓枠から雨漏りしましたが、高層階は地上より風当たりが強く、下階では起きないような窓の振動や隙間風・雨水の侵入が起こり得ます。台風時には窓に目張りをしたりタオルを詰めたりと、一手間かける必要があるでしょう。

建物の管理体制も重要なポイントです。最近のコンドミニアムでは非常用発電機が設置されており、停電時でもエレベーターや共用廊下の照明程度はバックアップできる所が多いです。私のマンションでも短時間なら非常電源が使えると聞いており、実際エレベーター1基と非常灯は生きていました。ただし非常電源にも限りがあるため、長時間の停電では高層階は厳しい状況になります。さらに地下駐車場の排水設備非常用ポンプの有無も確認しておきたい点です。大雨で地下駐車場が浸水すると車やバイクが被害を受けるだけでなく、電気系統がショートして建物全体に影響が及ぶ恐れもあります。幸い私の建物ではポンプが稼働し続けて浸水を防いでくれましたが、これも管理会社の日頃の整備のおかげだと思います。マンション選びの際には、「洪水対策や停電対策がしっかりしているか」を不動産仲介会社に尋ねてみるのも良いでしょう。具体的には「過去に停電・浸水はあったか?」「非常用電源や排水ポンプの設備状況は?」といった点です。日本人にとっては馴染みのないチェック項目かもしれませんが、ハノイで安心して暮らすためにはこうした視点も欠かせません。

迫る台風20号(国際名:Bualoi/ブアローイ、ベトナム名:10号):最新情報と備え呼びかけ

さて、この記事を執筆している2025年9月現在、また新たな台風が北部に接近中です。台風20号(国際名:Bualoi/ブアローイ、ベトナム名:10号)が非常に強い勢力を保ったまま、まさにハノイに向かっているとの予報が出ています。この台風10号はフィリピン沖で発生後に急速発達し、専門家によれば、9月29日から30日にかけて北中部の広範囲に上陸・通過する見込みで、進路上の沿岸部では暴風と高波による被害が懸念されています。

ベトナム当局も最大限の警戒を呼びかけており、国家水文気象予報センター(NCHMF)は「船舶の沈没や竜巻発生に注意」と異例の声明を出しています。沿岸部の各省では既に漁船の避難や海上活動の禁止措置が取られ、ハロン湾など観光船も29日~30日に出航停止になる可能性が高いとの情報です。在ベトナム日本国大使館からも領事メールで注意喚起があり、「台風から離れた地域でも大気の不安定化により突然の突風や雷雨に見舞われる可能性がある」として在留邦人に最新情報の入手と安全確保を促しています。都市部の浸水や山間部の土砂災害に最大級の警戒が必要です。ハノイ市当局も非常態勢を敷き、早めに市民に対して不要不急の外出自粛や備蓄の確認を呼びかけています。

私たち在住者も気を緩めず備えましょう。まずは最新の台風情報をニュースや気象局サイトで逐次確認してください。進路が多少逸れたとしても、前述のように油断は禁物です。風雨が強まる前にベランダや窓周りを点検し、飛ばされそうな物は室内へ、排水口は清掃。懐中電灯・モバイルバッテリー・飲料水・食料・常備薬など非常用品を今一度チェックし、2~3日自宅で籠城できるだけの備蓄を整えてください。停電の可能性も見越してお風呂に水を貯め、予備の水容器も満たしておくと安心です。トイレ用水やいざという時の雑用水になります。それから家族や友人との連絡手段の確認も重要です。携帯の充電は満タンに、モバイル充電器も用意。通信が途絶した場合に備えて集合場所や避難方法を話し合っておくのも良いでしょう。

私自身、2023年の台風ヤギ体験で痛感したのは「備えあれば憂いなし」という当たり前のことでした。あの時の教訓を活かし、今回の台風9号にも万全を期したいと思います。皆さんもどうか油断せず、安全第一でお過ごしください。台風が過ぎ去った後、ハノイの空にまた穏やかな日常が戻ることを祈りつつ…。被害が最小限で済むよう、お互いしっかり備えてこの局面を乗り切りましょう

最後までお読みいただきありがとうございました。どうか皆さん無事に、そして笑顔で台風明けの青空を迎えられますように。ではまた、次の投稿でお会いしましょう!