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VNeIDを登録する外国人用の公安局

ベトナムの行政改革と日本人駐在員への影響

目次

ベトナムでは今年に入り、省庁の再編行政区画の統廃合、そして新たなデジタルIDシステム(VNeID)の導入など、大規模な行政改革が次々と進んでいます。長期滞在する日本人駐在員にとっても「いつの間にかルールが変わっていて戸惑った…」という事態が起こりかねませんよね。今回は、最新の現地情報をもとに、こうした行政改革が日本人駐在員の生活や手続きにどんな影響を及ぼすのか、ポイントごとにまとめてみました。ぜひ今後の備えにお役立てください。

VNeIDって何?外国人も登録が必要?

まず話題のVNeID(ブイ・エヌ・イー・アイ・ディー)について。これはベトナム公安省が展開する全国統一の電子身分証明システムで、いわば「ベトナム版マイナンバー」のようなものです。2021年からベトナム人向けに運用が始まり、行政サービスや銀行口座開設、賃貸契約など様々な場面で活用されています。そんなVNeIDが2025年7月1日からついに外国人にも本格適用されました。

では外国人(日本人駐在員)は登録が義務なの? 実は法律上は「必ず登録せよ」という明文規定はまだありません。しかし 企業の法人アカウント(オンラインで行政手続きをするための企業用電子ID)を利用するには、その法定代表者(もしくは委任を受けた人)の個人VNeID(レベル2)がひも付けられている必要があり、実質的に代表者は登録が必須です。日本人駐在員で現地法人の社長やマネージャーを務めている方は、会社の手続きを円滑にするため早めの登録が強く推奨されています。在ベトナム日本商工会議所(JCCI)も、将来的に行政手続きが完全にVNeID移行する可能性を見据え、早めの対応を呼び掛けています。一方、それ以外の外国人駐在員については現状では登録は任意で、すぐに必要になる場面は多くありません。ただしオンライン行政サービスが主流化すれば、長期滞在者は「事実上必要」になる日が来る可能性も高そうです。

現時点のVNeID登録の状況と手順も押さえておきましょう。2025年7月から8月19日までは外国人向けの発行強化キャンペーン期間とされ、各地の出入国管理局(移民局)で窓口時間延長などの対応が取られています。登録するには本人が直接、各省・市の出入国管理局に出向く必要があり、委任や代理申請は認められていません。持参するものはパスポート、一時滞在証明カード(TRC)または永住カード(PRC)、ベトナム国内で使用中の携帯電話番号(本人名義のもの)、申請用紙TK01です。手続きは無料で、その場で顔写真撮影と指紋採取が行われます。申請後、しばらくするとVNeIDアプリ上で電子IDが有効化され、晴れてオンラインで各種サービスが利用可能になります。VNeIDを取得すれば、銀行取引や賃貸物件の登録、電子滞在カードの保存などがスマホひとつでできるようになるため、その利便性はかなり大きいです。現状では従来通りパスポートや紙の証明書での手続きも受け付けてもらえますが、今後は「VNeIDがないと行政手続きにアクセス不可」という時代が来るかもしれません。
※携帯電話番号は法人もOKとサイトで書いてあるところもありますが、私が登録に行った時は法人名義は不可でした。

ここがVNeIDを登録した公安局
VNeIDの登録する公安局の内部。担当者は全員英語が話せます。

行政区の再編で住所はどう変わる?

次に、行政区画の統廃合についてです。ベトナムでは2025年7月1日付で、地方行政区分が従来の63省・市から34省・市へ大再編されました。これは1975年以来最大の行政改革とも言われ、政治・行政の効率化や地域経済の発展を目的として行われたものです。従来の省同士を統合し、6つの中央直轄市と28の新しい省で再スタートするという大胆な施策で、たとえばホーチミン市では以前からあった「2区」「9区」「トゥードゥック市」を統合して新「トゥードゥック市」を設立するなど、都市内部でも区画整理が行われています(2021年に先行実施)。

こうした行政区再編が不動産契約や住所登録、住民関連の手続きにどう影響するか、心配になりますよね。結論から言うと、基本的には現行の住所表記や契約書はすぐに無効になるわけではないようです。ベトナム政府は今回の再編に際し、「企業の登録所在地が行政区画変更によって変わる場合でも、現行の登録証明書(ERC)は引き続き使用でき、住所変更の届出は義務ではない」とのガイダンスを示しました。つまり会社登記などは急いで書き換えなくてもOKということですね。ただし希望すれば新しい行政区名に合わせて住所変更登記を行うことも可能で、必要に応じて変更手続きを選択できる柔軟な対応になっています。

もっとも、問題は細かい実務面での指針がまだ統一されていないことです。現時点(2025年7月)では、例えば「いつまでにERCを更新すべきか」「その他の許認可証の住所表記は更新が必要か」といった細部について、国レベルで統一的な通達が出ていません。そのため対応は各新設省・市の判断に委ねられるケースも考えられます。実際、「旧X省と結んだ契約や覚書は新体制でも有効なの?」「税務署や社会保険の管轄はどう変わるの?」など細かな疑問も出てきますが、一つひとつまずは新しくできた各省・市に確認が必要というのが現状です。少々面倒ですが、地域ごとに状況が異なる可能性がある以上、安全策として現地当局に問い合わせるのが吉でしょう。
※弊社を管轄する税務当局からはレッドインボイスは新しい住所で発行するように通達が来ております。

日本人駐在員に関係する住所手続きにも触れておきます。例えばホーチミン市の新「トゥードゥック市」に住んでいる場合、従来の「2区」等と住所表記が変わりますが、だからと言って賃貸契約を結び直す必要はありません。契約書の住所表記も旧名称のままで法的効力は保たれます。ただ、今後新しく契約する際には新しい行政区名を使うほうが望ましいでしょうし、社用の書類やウェブサイト上の住所表記も順次アップデートしておくと信用面で安心です。また、現地の警察への居住者登録(いわゆる一時居住届)についても、基本的には旧区画の所轄警察が当面は引き続き対応する予定です。たとえば「管轄がどこに変わったかわからず届け出先が不明」といった心配は現時点ではなく、従来どおりの窓口で処理可能とのことです。とはいえいずれは看板も組織図も新体制に移行するでしょうから、引っ越しや長期不在明けの際には「自分の担当窓口が変わっていないか」確認する習慣をつけておくと良いかもしれません。

省庁再編で手続き先が変わったものは?

行政区だけでなく、中央政府の省庁再編も進んでいます。特に日本人駐在員に関係深いのが、外国人労働許可証(ワークパーミット)の申請窓口です。実は2025年7月1日から、外国人労働者の労働許可証発行権限が大きく見直されました。これまで労働許可証の発行は労働傷病兵社会省(MOLISA)が所管していましたが、新たな政令128/2025号により、この権限が各省の人民委員会(省庁ではなく地方政府)に移管されたのです。要するに、中央から地方への権限移譲の一環として、外国人就労者に関する許可行政が地方面に委ねられることになりました。MOLISA自体も内務省へ統合され再編が進んでおり、外国人就労管理の体制が変化しています。

この変更により、労働許可証の申請・更新手続きを行う際の「提出先」や「承認者」が変わる可能性があります。従来は各省・市の労働局(労働省の出先機関)が窓口でしたが、今後は各省の人民委員会が申請受付・承認を担う形に移行するとみられます。まだ移行直後で実務運用は模索中ですが、申請書類やフローに大きな変更はなくとも、「誰の判子をもらうか」が変わるだけでも行政手続きでは一時的な混乱が起こりがちです。現地紙の報道によれば、2024年末時点で約16万人の外国人労働者がベトナムにおり、そのうち約14.9万人が労働許可証の取得義務対象とのことです。この大量の手続きを円滑に引き継ぐため、当局も周知を図っている最中ですが、駐在員の皆さんとしては「労働許可証関連の手続きは7月から担当部署が変わったらしい」ということを頭に入れておくとよいでしょう。会社の人事担当やエージェントとも連携し、最新の申請先(新しいオンライン窓口や各省の担当部署)を確認するようにしてください。

また、滞在延長(ビザ延長)や住所登録(住宅登録)に関する手続きもデジタル化と組織再編の影響を受けています。たとえば、従来ホテルや大家さんが行っていた外国人滞在者の公安登録はオンライン化が進み、公安省の電子システム上で管理されるようになっています。物理的な「居住証明書」や紙の住民票はベトナム国民向けには2023年に廃止され、データベース化されました。外国人についても一時滞在先の情報は公安のデータに登録され、VNeIDに電子滞在証明を格納する仕組みへと移行しつつあります。実務的には、従来どおり最寄りの警察にパスポートと滞在カードを持って申請すれば延長手続き等はできますが、将来的にはオンライン申請や電子証明への完全移行も視野に入っているようです。「顔写真や指紋情報も全部オンラインで済んだら楽なのに!」と思いますが、現場ではまず紙と電子が並行する過渡期です。新旧の制度が混在する間は、「あれ、どっちで申請するんだっけ?」と迷うこともあるかもしれません。そんなときは遠慮せず担当窓口に確認しましょう。幸い、大幅な制度変更があっても当面は旧来方式も並行して受け付けてもらえるケースがほとんどなので、最悪でも手続き自体ができなくなる心配は少ないです。
※公安印のある居住証明書の取得は2025年より有料の場合がほとんどです。ベトナム国内で利用の居住証明書は公安印が不要になっているので印鑑が必要なのか確認が必要です。

現場で聞こえる「困った!」声と実践アドバイス

では最後に、実際に駐在員やわれわれのような日系の不動産会社から聞こえてくる具体的な困りごとや注意点をいくつか挙げてみます。制度は急に変われど、現場対応は人間くさく、ちょっとしたコツで乗り切れることもありますよ。外国人駐在員がホーチミン市の出入国管理局で案内板を確認している様子。VNeID登録の案内がベトナム語で表示されており、内容を理解するにはサポートが必要だと思います。

  • 「VNeIDって結局何するの?何を準備?」の戸惑い: 7月に入ってから駐在員コミュニティでも「VNeIDって登録しないといけないの?」「何それ聞いてない!」という声がじわじわ広がりました。実際、メディアでも急に関連ニュースが増えたため、「結局自分も対象なの?」と混乱した方も多かったようです。情報不足から不安になるのは当然ですが、まずは冷静に公式情報をチェックしましょう。今回で言えば公安省や日本大使館、JCCIから公式アナウンスが出ていますし、本記事で紹介した通り「代表者ならほぼ必須、その他は今後必要になるかも」という整理ができます。周りのうわさに振り回されず、まずは信頼できるソースで確認する姿勢が大切です。
  • 言語の壁:通訳や翻訳アプリの助けが必要に: 新しい手続きはベトナム語での案内が中心となるケースが多く、ここに苦労する駐在員が続出しています。例えばVNeID登録用の申請フォームTK01は当初ベトナム語版しか入手できず、「何て書いてあるの!?」と頭を抱えた方も。実際には英語版フォームも用意されていましたが、現場で聞かないと出してもらえなかったという報告もあります。こうした場面では遠慮なく通訳をお願いしたり、翻訳アプリを駆使したりしましょう。幸い最近は在越日本人向けに日本語でサポートしてくれる代行業者や、不動産仲介会社が情報発信をしてくれるケースも増えています。「言葉が心配だから…」と手続きを後回しにせず、プロやツールを積極的に頼ってスマートに乗り切りたいですね。
  • 窓口・担当が「分からない!」: 行政区画や省庁の再編に伴い、「どこの部署が担当になったのか分からない」という戸惑いも散見されます。特に労働許可証関連では「これからは人民委員会が承認するらしいけど、じゃあ申請書類はどこに出せばいいの?」と現地人事から問い合わせがあった例も。現状では経過措置的に従来の労働局が窓口業務を続けている地域もありますが、自治体によって対応が異なるかもしれません。一番確実なのは、最新情報を直接確認することです。役所のウェブサイトや掲示をチェックしたり、電話や窓口で「この手続きはどこで?」と尋ねたりするのをためらわないでください。ベトナムの役所は聞けば親切に教えてくれることも多いですよ(言語の問題はありますが、その時は上記の通り何とか工夫を!)。また、日系企業同士のネットワークやコミュニティで情報交換するのも有効です。「◯◯省ではこうだった」というナマの情報は貴重ですが、最終的には公式確認することもお忘れなく。
  • 住所変更のタイミングと注意: 行政区再編で住所が変わったものの、何から手を付ければいいか分からないという声もあります。幸い、契約や登記の住所表記は旧表記のままでも有効なので慌てる必要はありません。ただ、「税務署や社会保険の担当が変わった場合の手続き」など細かい点で不安になりますよね。例えば「社宅の住所がA省からB省になったけど、社員の納税管理番号はどうなるの?」といった疑問です。これについては国の財務省も「企業側で特に届け出不要」としているものの、地域の運用で異なるケースも考えられます。心配なら所轄税務署や保険事務所に確認してみましょう。ベトナムの当局も、再編によって市民や企業に不利益が出ないよう「正当な権利利益の保護」を約束しています。疑問点は逐一問い合わせて潰していけば、きっとスムーズに移行できるはずです。

まとめ

ベトナムの行政改革はスピード感があり、最初は戸惑うことも多いですが、その方向性は「行政手続きの簡素化・デジタル化」「地方でのワンストップサービス強化」にあります。つまり、慣れてしまえば私たち外国人にとっても「便利になる」可能性が高いのです。もちろん移行期の今は、不明点だらけで大変に感じるかもしれません。しかし本記事で挙げたように、最新情報をキャッチアップすることと、現地のリソース(当局・コミュニティ・専門家)を活用することで、きっと対応できるはずです。カギは「早めの準備と確認」。大きな制度変更ほど「知らなかった…」では済まされないので、アンテナを張っていきましょう。

ベトナムで頑張る駐在員の皆さんが、これからも安心して現地生活とお仕事に専念できるよう、少しでも参考になれば幸いです。引き続き新情報が出ましたら共有しますね!では、また。

参考資料:私自身の体験、弊社で対応した状況、 信頼できる現地メディア報道や在ベトナム日本大使館・JETROなどの発表をもとに作成しました。jetro.go.jpjetro.go.jpjetro.go.jpvpress.asianews.tuoitre.vn
しかし、届出先や担当者によって対応や手続き方法が違う場合もあります。

今後もアップデートがあれば随時情報を更新していきます。何か気になる点があれば、お気軽にコメントやお問い合わせください。皆さんで情報共有しながら、この変化の時期を乗り越えていきましょう!